総務部メルマガ

2005/07/04

第39号

現在の景気動向は、踊り場といわれているが、完全に平成恐慌脱出するのか、再び転落するのかは、まったく誰にも予測が出来ない。さまざまな統計上の数値は、確かに経済回復を示している様? だが、経済構造が転換したのに旧来の測定方法では判断できない。景気を下支えする個人消費の伸びは未だ低く、豊かさについては回復していないことである。
興味ある話として…。 洋食、洋服、キャベツ、リンゴ、これらは、昭和大恐慌からの脱出期に、新商品として売り出されたものだ。その多くが、大正ロマンの時代に、一般庶民が高嶺の花と夢みていた商品なのである。蓄音機、即席カレー、ヨーヨー、シャンプー、マニキュアセット、喫茶店、三つ又ソケット、六球スーパーラジオ、バイク陸王、模様入りビー玉、洗面器なども然りで、昭和大恐慌を脱出するため個人消費を回復させた商品である。(昭和12年の日中戦争による贅沢禁止令で、多くの商品が規制され、次に経済は多国籍戦時経済へ)。さて、バブル時代に夢みていた商品と言えば、ブランド品、高級福袋、大型乗用車、街中高級マンション、高級老人産業、海外旅行、エスニック、イタメシ、ペット、独身生活、サラ金など。例えば、サラダに使う野菜の種類も増え、レタス、キャベツ、キュウリ、トマトの昔風では魅力がなくなった。これらの新野菜や、日本料理の彩りに使う徳島県上勝町の葉・枝出荷も情報通信技術ならではの新商品である。マーケティングにIT情報通信の裏付けをもって、チーズ、パスタなど農産物を生産している先進はイタリア農業である。経済理論からしても、便利に安く、一般に普及させるには、情報通信での裏付けが切り札となる。北欧の小国が日本へ進出する商品開発のバックにも、やはり、IT情報通信の裏付けがある。
そこで、最近危惧されているのは、「高付加価値製品又は高水準サービス」も支えるIT情報通信人材の育成がうまくいっていないことだ。単なる技術力レベルでは(技術力と商品力は別次元だが)中国、インド、韓国に負けている。高度な人材を育成する体制は大学をはじめとして未整備状態。北欧や豪州で進められているような熟練職人のIT情報通信化再職業訓練の欠落。業務・職務遂行における携帯メールやPC活用の未発達。情報通信産業の者以外のIT情報通信に関する工夫と創意の取り組みの無さ。…IT情報通信を扱うことは、自動車を運転することと本当によく似ているのだが…情報通信事業と自動車運送事業の「働き方」も酷似しているのだが。
…これらをヒントに、個別企業からのIT情報通信活用も一挙に進めることが出来ないものだろうか? …豊かな経済を作り出す、商品を作り出す人事体制はいかに。


平成19年の4月1日から、労使のトラブルに関する社会制度も変更される。マスコミでおなじみの司法改革実施とともに、人事労務管理が様変わりすることは間違いない。
ひとつは、労働裁判は労働審判制度が導入され、単純な内容の事件であっても、1年数カ月かかっていた裁判が、三カ月程度で審判が下されることも可能になった。私は一概にそう思わないが、労働者からの裁判は起こしやすくなるとの見方もある。たとえば、解雇の場合、労働者が訴訟を起こすと、雇用保険は即支給となるが、失業給付期間中に判定が下されるから、労働者が気軽に裁判を起こすことができるというものだ。
もうひとつ、こちらの方が重要。現在、労使のトラブルに関する「あっせん機関」は、紛争調整委員会、労働委員会の二つである。労使トラブル解決能力のない場合、グローバル基準に基づかない解決の場合、経営者側からの解決意向が強い場合などに備えて、あっせん制度を活用し充実させようというもので、この部門への社会保険労務士の大量投入が決まった。あっせん制度は、裁判のように白黒を判定するものではなく、労使双方の意見を聴取して調整を進めようというものである。取り扱いの対象は、業務命令からセクハラ・いじめ、解雇や退職金に至るまでの、あらゆる労働問題である。実質的に「もっぱら調整を行なう労働関係の行政裁判所」をイメージした方が分かりやすい。(ちなみに公正取引委員会も行政裁判所) 裁判とか団体交渉と違って、事業主側から「あっせん申請」をすることも容易であり、不良社員問題から人件費倒産回避まで、すでに多くの実績が上がっており、社内の経営管理手法として次々と活用されている。このことで、国も職場トラブル多発による労働意欲減退に起因する個別企業の経済活力減退に、公共事業としての本格的な手を打ち始めたことになる。
このため、社会保険労務士法の一部を改正する法律(平成17年法律第62号)が、平成17年6月17日公布され、平成19年4月1日からの実施とその準備が始まった。社会保険労務士の資格を事実上仕切り直す。研修・国家試験をもう一度受けさせることで、労務管理や法律の知識と技術・技能を持つ「特定社会保険労務士」に、あっせん代理人資格を認めることとした。不合格の社会保険労務士は、事務の電子化とあいまって、結果的に人事労務管理の世界から排除となるであろう。この「特定社会保険労務士」に特権を与え、企業内でのあっせん・和解手続の、制度的な促進部隊にしようとするわけだ。なので、個別企業の活用の仕方としては、今までならでは、トラブル発生=解雇か裁判かとなり、当事者が面と向かえば感情問題が起こり、あっせん・和解のプロも準備出来ないことから、実態として「話し合い・あっせんが閉ざされていた状態」から、あっせん・和解や融和の道を選択することもできるようになったのである。どうしても弁護士では効率一辺倒となり役不足であったものが、あっせん代理人の特定社会保険労務士を活用し、本人との代理交渉も可能なのである。
なお、社会保険労務士は、来年4月から、公然と労組との争議対策もできるようになったので、有能な社会保険労務士であれば団体交渉に参加してもらえる道も開けてきた。


研修医は「労働者」との初判断が最高裁で「労務の提供がある」と認定された。過労死が認定された関西医大病院の研修医、当時26歳の未払い賃金をめぐって、遺族が「最低賃金の水準を下回っているのは不当」との主張で病院側に差額分の支払いを求めた訴訟である。最高裁第二小法廷は6月3日「研修医は労働基準法上の『労働者』に当たる」との初判断を示した。病院側に約2カ月分の最低賃金との差額約40万円の支払いを命じたものであるが、影響は非常に大きい。遺族である被災者の父親が社会保険労務士であったため、弁護士一般では不可能な、詳細かつ現実に即した論述が可能となり、実態が認定されたとの評価が出ている。「東京都と大阪府は、救急で運ばれると命が危ない」と噂されるほどであるから、労働問題の切り口から医者の世界に実態判断でのメスを入れることが可能になったのではないか。

▽判決文(最高裁判所サイト)
http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/$DefaultView/84186BDA956A209749257015001C4F83?OpenDocument


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